そのとき、私は

 今日は構想中の新作小説のオムニバス的なものを。


 そのとき私は、
 はじめて自分の無力と無知を思い知って、君の名を呼んだ
 

 そのとき俺は、
 はじめて自分の生きる目的と意味を見つけて、君に応えた



 戦火の迫るこの地でただ一つ守りたいものは
 日常と言う名の平和
 けれど、それは守るのには大きすぎる


 私一人では守れない、守りきれない
 人々はいがみ合い、憎しみを募らせる


 馬の嘶き、剣が打ち合う金属音
 争いは洪水のように全てを呑み込んで行く




 戦火のその火を浴びてまだ一人立っていたのは
 願いを叶えるその為に
 けれど、それは多くの人にとって悪の行為


 俺一人では生きれない、生きていけない
 何でもいい。目的を、存在意義を与えて欲しい


 紡ぐ言葉、立ち上る劫火、風に舞う灰燼
 全てを無に還そう




 君の声が俺の名を紡いだとき



 そのとき、俺は
 そのとき、私は



 全てを捧げて
 君の為だけに生き、
 君の為だけに全てを許そう


 全てを滅ぼすことでさえ
 君が願った時
 それは俺にとっての正義になる




 そのとき、私は


 全ての代償にこの身を
 終わらせる為に
 誰よりも悪になることを


 そのとき、俺は


 君の愛するもの全てを守ることを




 誓った。