キヲク。

 久しぶりの短篇話を



 よく晴れた空、肩をぬけていく風
 揺れる木漏れ日と鼻先を掠めて舞う蝶
 その心地いいもの全て


 僕の心を揺らしながら
 君のキヲクを優しく掘り起こすんだ
 僕の一番幸福なキヲクを


 ハッピーエンドを迎えたわけでもない
 その前に始まってもいない
 そんな他愛もないキヲク
 だけどそれは僕にとって紛れも無く幸福で
 僕を支えているかけがえのないもの


 バットエンドを迎えたわけでもない
 でももう二度と戻れない
 そんなちょっと切ないキヲク
 だから僕は君を忘れるなんて出来ないまま
 今日も歩く、いつかまた出会うため


 ハッピーエンドを迎えたわけでもない
 その前に始まってもいない
 そんなささやかな幸福のキヲク
 いつの日か君のキヲクが掘り起こされるものではなくて
 常にそこに温もりと共にあるように
 今度こそ何かが「始まる」ように
 僕は変わって、君にもう一度


 「はじめまして」を


 言おう。