御伽噺

 おはなししよう


 僕が零した一つの硝子玉
 青色で透明で、でも何かが隠されてる小さな玉


 ちりん


 零した瞬間に耳に届いた音は
 わくわくするような切ないような
 そんな綺麗な音だった


 僕が歩くたびに一つ、また一つ
 硝子玉が地面に転がる
 やわらかな光を内から放って
 僕はそれがとても愛しい


 僕はそうして歩いてきたんだ


 歩いた軌跡は様々な色の硝子玉


 喪失は新たに何かを得る時に起こるもの


 だから、僕の抱えた荷には
 常に硝子玉がぎりぎりいっぱいつまっていて
 歩くたびに


 ひとつ


 ちりん


 また、ひとつ


 ちりん


 喪失と獲得のくりかえし


 硝子玉


 僕の記憶のその断片
 愛しい光の玉