羽根があるのなら

 私の背に、長く憧れた羽根があるのなら


 私は一人の人間だ
 臆病で意地っ張りな女の子


 私が前へ進むために用意されたのは
 だから、当然のごとく
 この両足


 足は大地を踏みしめる
 大地を蹴ってぐんぐん進む


 走って。


 まだ走って。


 でも、やっぱり臆病で
 立ち止まったりする
 だけど、意地っ張りだから
 また歩き出す


 歩いて。


 まだ歩いて。


 私は一人の女の子
 特別なものは何もなく、
 取り柄といったら
 この二重の目ぐらい


 でも、私は女の子で
 君は、とびきりの男の子だった


 心は駆ける
 ぐんぐん駆ける


 いつしか君をみかけると
 私の足はむずむず
 するようになった


 傍に行きたいのに
 どうしても動けない


 かなしい
 むなしい


 私がもし絵本でみた
 あの、綺麗な羽根をもっていたとしたら


 そう


 私の背に羽根があったなら


 ひと飛びで。


 飛んで。

 ふわりと飛んで。


 君の前
 その場所に舞い降りて


 『大好きです』


 と


 言えるのに。